科学的な説明
いま言えることと、まだ言えないことを、分けて示します。
痛みや不調は、本物です。
ただし、組織の損傷だけでは説明できないことがあります。
この一文が、意識医学®の科学的な出発点です。「気のせい」でも「心の弱さ」でもありません。近年の痛み研究は、身体からの信号だけでなく、脳と神経系が学習した危険予測・感情の記憶・身体感覚の意味づけが、症状の続き方に関わることを示してきました。意識医学®は、その領域に、身体からのアプローチを重ねる統合的なケアの体系です。
このページでは、意識医学®の考え方が、現在の科学とどこで重なり、どこで重ならないのかを、できるかぎり正直に整理します。都合のよい研究だけを並べることはしません。根拠の弱い部分は、弱いと書きます。
背景となる研究
近年の痛み研究が、明らかにしてきたこと。
意識医学®は、単独で生まれた考え方ではありません。世界の研究が、同じ方向を指しはじめています。
| 領域 | わかってきたこと | 意識医学®との関係 |
|---|---|---|
| 痛みの再処理 (PRT) |
慢性腰痛の成人151名を対象とした2022年のランダム化比較試験で、痛みを「身体の損傷の証拠」ではなく「脳・神経系が学習した危険信号」として捉えなおす心理療法を受けた群50名のうち33名が、治療後に痛みの自己評価0〜1(10点満点)に到達しました。比較群はプラセボ群20%、通常ケア群10%でした。2025年に報告された5年後の追跡では、その時点で回答した38名のうち21名(55%)が0〜1でした。ただしこれは追跡できた方を分母にした割合で、最初に割りつけられた50名を分母にすると42%にあたります。また、治療直後に0〜1だった方がそのまま維持したかを示す解析ではありません。 | 「痛みの意味づけが変わると、痛みの感じ方が変わる」という臨床の実感と、最も強く重なる研究領域です。 |
| 予測符号化 | 脳は身体からの信号をそのまま受け取っているのではなく、過去の経験・記憶・予測と照合しながら「いまの感覚」を構成している、という考え方です。同じ刺激でも、脳が「危険だ」と予測していれば強く感じられます。 | 意識医学®でいう「脳に固定化した痛みの記憶」と「新しく育てる安心の感覚」を、神経科学の言葉で説明する枠組みです。 |
| 内受容感覚 | 心拍・呼吸・内臓感覚など、身体の内側から来る感覚への気づき方が、不安・気分・摂食・依存・身体症状に広く関わることが整理されています。 | 「触れる・動かす・語る」を通じて身体感覚に安全に注意を向ける手順は、この領域に位置づけられます。 |
| オープンラベル プラセボ |
「これはプラセボです」と伝えたうえで用いても、症状が改善しうることが、過敏性腸症候群(80名)や慢性腰痛(97名が割りつけ・83名が完了)などで報告されています。説明・期待・治療の場そのものが働くことを示します。 | 説明の仕方、場のつくり方、関係性を治療の一部として考える姿勢と重なります。ただしこれらの研究は、説明・期待・関係性のどれがどれだけ効いたのかを分けて示したものではありません。 |
| ノシプラスティック 疼痛 |
痛みを処理する神経系の働き方の変化が関わる痛みについて、国際疼痛学会(IASP)が2017年に「侵害受容性」「神経障害性」と並ぶ第3の仕組みの記述として採用しました。病名や診断名ではありません。他の仕組みと重なって存在することもあります。 | 検査で異常が見つからないことだけで当てはまるものではありません。3か月を超えて続いていること、痛みの広がり方、感覚が過敏になっている所見など、複数の条件をあわせて考えます。 |
数字の読み方について。 上の「66%」は、選ばれた慢性腰痛の参加者のうち、その治療群で痛みスコアが0〜1に達した割合です。「慢性痛の66%が治る」という意味ではありません。また、これらの研究はPRTという特定の心理療法を検証したものであって、意識医学®そのものを検証したものではありません。
見立ての枠組み
人を、5つの層のつながりとして観る。
意識医学®は、人を身体・脳神経・潜在意識・関係性・意識体という5つの層に分けて観ます。分けるのは、切り離すためではなく、どこから手をつけるかを見立てるためです。
| 層 | 意識医学®の見方 | 対応する科学的な説明 | 主な関わり方 |
|---|---|---|---|
| 第1層 身体 |
肉体のレベル | 筋肉・関節・姿勢・呼吸・血流・触覚入力 | 整体、手技、軽いタッチ、呼吸 |
| 第2層 脳神経 |
痛みの記憶のレベル | 痛みの予測、危険信号、恐怖による回避、条件づけ | 痛みについての学び、安心の再学習、身体感覚の捉えなおし |
| 第3層 潜在意識 |
思い込み・感情のレベル | 感情記憶、自己イメージ、ストレス反応 | 対話、誘導瞑想、感情のワーク |
| 第4層 関係性 |
家族・人間関係のレベル | 愛着、境界線、社会的ストレス、自律神経の警戒 | 許しのワーク、感情の解放、関係の捉えなおし |
| 第5層 意識体 |
生き方・意味のレベル | 実存的な意味づけ、価値観、自己物語 | 物語の組みなおし、自然・音・五感、瞑想 |
「意識体」という言葉について。 意識医学®では、第5層を宗教的な意味での霊魂とは考えていません。身体感覚・感情の記憶・潜在意識・関係性・生きる意味が重なってできた「意識のまとまり」を指しています。検査で測れるものではなく、その人の語りと生き方を通してあらわれるものとして扱います。
言葉について
現場の言葉を、科学の言葉に置きなおすと。
臨床の現場では、患者さんに伝わりやすい言葉を使ってきました。それらは比喩であって、そのままの意味で物理現象を主張しているわけではありません。専門職や研究者に向けては、次のように置きなおして説明します。
| 現場で使ってきた言葉 | 科学の言葉での説明 |
|---|---|
| 波動・エネルギーを感じる | 身体の内側から来る感覚(温感・拡張感など)への気づき/自律神経の状態 |
| トランス状態 | 深いリラクゼーション、注意の状態の変化、安全の学習が起きやすい状態 |
| 暗黒の柱 | 脳に固定化した痛みの記憶・危険予測のネットワーク |
| 純白の柱 | 安全・快・自己効力感についての、新しい神経の学習 |
| 許し | 感情記憶の再調整と、自律神経の警戒の解除 |
| 魂のレベル | 生きる意味、価値観、自己物語(実存的な意味づけ) |
| すべてはひとつ | 身体・心・他者・自然のつながり(関係の中に埋め込まれた存在としての人間) |
根拠の強さ
どこまで確かなのかを、3段階に分けて示します。
意識医学®のすべての要素が、同じ強さの根拠を持っているわけではありません。ここを曖昧にしないことが、この体系を続けていくための条件だと考えています。
痛みの捉えなおしと、身体感覚への働きかけ
成人の慢性一次性腰痛については、教育・意味づけの組みなおし・段階的な活動の再開・多職種による総合的なケアが、WHOの2023年ガイドラインに位置づけられています(対象は腰痛であり、慢性の痛み全般ではありません)。PRTやオープンラベルプラセボの研究もこの層にあります。
ただし「確定した」という意味ではありません。PRTは選ばれた参加者による単一の試験であり、5年後の追跡では4分の1が回答していません。オープンラベルプラセボのまとめ研究も、研究どうしのばらつきが大きく、著者自身が「まだ初期の段階」と書いています。
自律神経と安心についての理論
「安全だと感じられる関係性が回復を支える」という臨床の実感は広く共有されていますが、その説明としてよく使われるポリヴェーガル理論には、解剖学の立場からの批判もあります。臨床で使う言葉としては有用ですが、確立した事実としては扱いません。
許しと、意味の組みなおし
許しに向き合う介入が、抑うつ・不安・怒りを和らげる方向の報告はあります。ただし、身体の病そのものへの直接的な効果を示した質の高い研究は、まだ足りません。意識医学®の中核に置いている部分ですが、根拠としては最も弱い層です。
宇宙観について。 「すべてはひとつ」のような宇宙のとらえ方は、意識医学®の世界観として大切にしています。しかし、それを量子力学や宇宙物理学によって裏づけられたものとして語ることはしません。物理学の話と、心のつながりの話は、別のものです。前者を後者の証明として使うことは、意識医学®の表現ルールで禁じています。
独自の検査について。 現場で用いてきた見立ての手順には、妥当性や再現性が検証されていないものがあります。これらは医学的な診断ではなく、対話を深めるための手順として位置づけています。
線引き
意識医学®が、言わないと決めていること。
誠実さは、何を言うかと同じくらい、何を言わないかで決まります。これらは私たちが自分に課している禁止事項です。
使わない言葉
- 病気が治る/完治する
- あなたの心が病気を作った
- 許せないから治らない
- 痛みは脳が作っているだけ
- 量子力学で証明されている
- ◯◯%が治る
- 医学では治せない/医療は必要ない
- 必ず/絶対/100%/今だけ
使ってよい言葉
- 痛みは本物です
- 組織の損傷だけでは説明できないことがあります
- 脳や神経系が危険を学習していることがあります
- 整う/回復する力を支える
- 近年の研究と通じる視点があります
- まだ確かめられていません
意識医学®は、必要な医療を否定するものではありません。医療機関での検査や治療と並んで、一人ひとりの回復する力を支えることを目指しています。気になる症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。認定サロンでの施術は医療行為ではありません。
これから確かめること
わからないことを、わからないまま置いておかない。
意識医学®を、ひとりの経験で終わらせず、学んだ人が再現できる体系として育てていくために、次の課題に取り組んでいきます。
- 意識医学®の3段階(見立て → 身体の安心 → 意味の組みなおし)を、手順書として公開できる形に整えること
- 現場で使ってきた見立ての手順について、施術者どうしで結果が一致するかを確かめること
- 主観的な改善(痛みの感じ方)と、客観的な変化(動きやすさ)を分けて記録すること
- 「許し」に向き合うことが、どのような方に合い、どのような方には負担になるのかを見きわめること
- PRT・内受容感覚・オープンラベルプラセボの各領域について、新しい研究を追い続けること
研究の進展によって、このページの記述は変わります。変わったときは、変えた事実も含めて公開します。
主な参考文献
このページが依拠した研究。
- Ashar YK, Gordon A, Schubiner H, et al. Effect of Pain Reprocessing Therapy vs Placebo and Usual Care for Patients With Chronic Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2022;79(1):13-23. doi:10.1001/jamapsychiatry.2021.2669
- Ashar YK, et al. Pain Reprocessing Therapy vs Placebo and Usual Care for Patients With Chronic Back Pain: 5-Year Follow-Up of a Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2025.
- Barrett LF, Simmons WK. Interoceptive predictions in the brain. Nature Reviews Neuroscience. 2015.
- Khalsa SS, et al. Interoception and Mental Health: A Roadmap. Biological Psychiatry: CNNI. 2018.
- Kaptchuk TJ, et al. Placebos without deception: a randomized controlled trial in irritable bowel syndrome. PLoS ONE. 2010.
- Carvalho C, et al. Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial. PAIN. 2016;157(12):2766-2772. PMID:27755279
- Kleine-Borgmann J, et al. Effects of open-label placebo on pain, functional disability, and spine mobility in patients with chronic back pain. PAIN. 2019.
- von Wernsdorff M, et al. Effects of open-label placebos in clinical trials: a systematic review and meta-analysis. Scientific Reports. 2021.
- World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. 2023.
- International Association for the Study of Pain (IASP). IASP Terminology ― Nociplastic pain.
- National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH). Reiki: What You Need To Know.
このページについて。 執筆・監修:図師 修(日本意識医学認定機構 代表理事/鍼師・きゅう師〔国家資格〕/臨床38年)。文献の確認日:2026年8月25日。研究の進展や新しい報告があった場合は、記述を改めたうえで、変更した事実も含めて公開します。ご指摘は機構についてのページからお寄せください。
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学びとして、深めていく。
意識医学®の考え方を、専門職として身につけるための講座があります。
また、機構の成り立ちや認定のしくみも公開しています。
※ このページで紹介した研究は、いずれも意識医学®そのものを検証したものではありません。意識療法士®は当機構が認定する民間資格であり、国家資格ではありません。認定サロンでの施術は医療行為ではなく、診断や治療を行うものでもありません。